『硝子のハンマー』貴志祐介

2012/01/14
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エレベータに暗証番号、廊下に監視カメラ、隣室に役員。厳戒なセキュリティ網を破り、社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。弁護士純子は、逮捕された専務の無実を信じ、防犯コンサルタント榎本の元を訪れるが–

見えない殺人者の、底知れぬ悪意。異能の防犯探偵が挑む、究極の密室トリック!「青の炎」から4年半、著者初の本格ミステリ!

日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。エレベーターには暗証番号。廊下には監視カメラ、有人のフロア。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は。殺害方法は。すべてが不明のまま、逮捕されたのは、続き扉の向こうで仮眠をとっていた専務・久永だった。青砥純子は、弁護を担当することになった久永の無実を信じ、密室の謎を解くべく、防犯コンサルタント榎本径の許を訪れるが―。

これ読んだような気がしてたけど、しおりが第1部で止まってたわ。

大きく2部構成に分かれていて、前半は弁護士と本職は泥棒の防犯コンサルタントが密室の謎を解こうとする本格ミステリ。次々に仮説を立てさせては使い捨てていく中盤の三転も四転もする展開の気前よさ。そこから転じて第二部では犯人の視点で綴られる倒叙ミステリになる。

どうもレビュー読むと倒叙ミステリになってから面白くなくなったとか、作者は犯人の心理を描きたかったのかとか言われてますが、何を言いなさるかね。わたくしは2部に入ってからニヤニヤしっぱなしでしたよ。

普通ミステリというものは、特に探偵役が登場して「それじゃ今から謎を解きましょう」というものは、過去の話――すでに終わってしまったことの話をすることで終わる。密室の謎を解いて犯人当てるにしても、密室が作られた過程や犯人が被害者を殺した場面は既に終わってしまったことであり、探偵の論理はそれをなぞることしかできない。『硝子のハンマー』が面白いのは、著者オリジナルと言われる大胆な殺害方法やそれを成立させるためのミスディレクションもそうだが、ひたすら犯行に至る過程を現在形で解き明かしていこうとするところにある。

現在形――。これに貴志祐介はこだわっている。

倒叙ミステリとなった第2部で描かれる主人公の心理描写や犯行に至る動機は大して重要じゃない。お座なりと言ってもいい。それらは「取り敢えずの説明」ほどしかウェイト置かれてない。著者が本当に重要視しているのは「今ここ」で何が起こっているかの出来事性、現在進行形の語りである。

第1部の探偵パートと第2部の倒叙パートとが拮抗した関係にあり、常に出来事は過去へ向かうのではなく、今ここから未来へと開かれている。

これが面白いんすよ。

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